障がい者手帳を使った就職は有利?それとも・・・

障害者手帳ありの就職は有利なの?

障がいがあって手帳を持っている人と、障がいがあっても手帳なしの人もいます。

また、手帳があるからと言って必ず就職で利用しなくてはいけないということもありません。

では、障がいのある人は、手帳を使うことで就職が有利になるのでしょうか。
手帳なしの人は、手帳を取得したほうが就職には良いのでしょうか。

今回は、そのことについて解説していきます。

障がい者手帳があることで就職で有利なこと

障がい者手帳を利用して就職した時の4つのメリットです。

  1. 一流企業への就職がしやすい
  2. 仕事と職場で合理的配慮がある
  3. 治療と仕事の両立が出来る
  4. 体と心の負担が減る

詳しく説明していきます。

1.一流企業への就職がしやすい

一流企業だけが良いわけではありませんが、障がい者が働く環境が整備されている傾向が高いのは間違いありません。

また、積極的に採用をしているのも一流企業が多いです。

理由は、3つあります。

  • コストがかけられる
  • コーポレート・シチズンシップの観点から
  • 法的義務(障がい者雇用促進法)

このような背景があり、障がい者手帳が有る人は一般枠と比べた時採用されやすくなっています。

コーポレート・シチズンシップとは

企業市民、企業の市民活動を意味する。企業も地域社会におけるよき市民として存在し、社会に貢献すべきという考え方。
引用元:公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会

2.仕事と職場で合理的配慮がある

障がい者差別解消法や改正障がい者雇用促進法において、事業者に対して合理的配慮の提供義務があります。

合理的配慮とは

障がい者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のこと。

引用元:wikipedia

このような背景から、事業者は障がい者が働きやすい環境を用意する必要があります。

これにより、ひとり一人に必要な合理的配慮が用意され障がいがあることが妨げにならないように仕事が出来ます。

3.治療と仕事の両立が出来る

障がい者は、障がいとなった起因による治療の継続や経過観察が必要な人は多くいます。

以前は、理解のない企業だと通院にための欠勤をしにくかったり、出来ないなんて環境のところもありましたが、現在は、合理的配慮により理解が進み欠勤扱いではなく、肩身の狭い思いをしなくても通院できるように制度が作らています。

このことにより、通院や経過観察が引き続き必要な人も治療と仕事が両立できる環境があります。

4.体と心の負担が減る

忙しい職場では、残業や休日出勤などからのストレスで、体調を崩しやすく心身ともに健康管理が難しくなることがあります。

ですが、障がい者手帳が有ることで、合理的配慮を受けることが出来るので、定時に帰れるように残業は無いようにしたり、負担のある業務から外れることが出来ます。

毎日、継続して仕事が出来ることを第一に考えるので、心と体への負担が減り健康を維持することが出来ます。

障がい者手帳があることで就職で不利なこと

  1. 希望の仕事ができない
  2. 仕事量が少ない
  3. 同僚との差を感じる
  4. 年収が少ない

それでは、一つずつ見ていきましょう。

1.希望の仕事ができない

企業の事業内容や職種により、合理的配慮が不可能なことがあります。

これは、企業や事業種が悪いのではなく、業務上どうしても配慮が難しいことがあるからです。

例えば、私のように下肢に障がいがあり、長く歩行するのが難しい人に足で稼ぐような営業職は難しいです。

このように、合理的配慮のある環境を作るためには、どうしても難しい職種や業務があるので、職種によっては希望に添えれない場合もあります。

2.仕事量が少ない

仕事を障がい者用に減らすわけではありませんが、作業予定を決める中で残業など無理がかからない中での調整となると、最初はどうしても少なめに調整をされやすいです。

慣れてきて、作業量がわかってくれば適した時間や作業量で調整はされますが、それも無理がないように少なめになります。

3.同僚との差を感じる

障がい者枠の同僚とでは、仕事量にそれほど差が出ることはないと思いますが、一般枠の社員とは、どうしても差が出てしまいます。

それは、特に雇用の差で感じることが多いと思います。

障碍者枠の雇用は、障がい者枠で契約社員のことが多いです。
正社員と比べるとどうしても責任の重さなどから、仕事の内容が変わるため、その差を感じる人は多いです。

4.年収が少ない

これも、働き方や雇用の差が出てきます。

残業を抜いて考えても、障がい者で契約社員の場合ボーナスの支給がない企業もあります。

また、ボーナスがあっても、基本給の違いから年収となると差が出ます。

年代や入社時期で比べると、その差にがっかりする人は少なくありませんが、自分のロール(役割)で見てみましょう。

悲観するほど悪くはないと思います。

でも、年収として考えた場合、一般枠とでは差があります。

障がい者手帳なしで就職して有利なこと

  1. 希望する職種・仕事にエントリーできる
  2. やりがいがある
  3. 責任ある仕事ができる

1.希望する職種・仕事にエントリーできる

障がい者手帳を利用しないと、合理的配慮の対象から外れます。

そうなると、職種や業務の制限はなくなるので、希望するJobにチャレンジすることが可能になります。

3.やりがいがある

合理的配慮外になるので、希望する職種に就くことも出来ます。

また、総合職や専門職での入社も期待できるので、将来を見越したキャリアデザインも出き、やりがいを感じられる仕事が出来ます。

4.責任ある仕事ができる

総合職や専門職になると、目標設定が高くなりアセスメントも厳しくなります。

しかし、その一方期待もされているので評価以上の責任ある仕事が出来る機会が増えてきます。

障がい者手帳なしで就職で不利なこと

  1. 障がいへの配慮はない
  2. 就職は難しい
  3. 治療と仕事の両立は不可能
  4. 評価に配慮はない

1.障がいへの配慮はない

障がい者手帳なしで就職すると、当然のことながら合理的配慮はありません。

定期通院や経過観察も自分で調整して出来る範囲で対応することになります。

また、仕事量への配慮もないので残業も必要に応じてあります。

2.就職は難しい

一般枠での就職は、競争率が高く採用されるまでのハードルは非常に高くなります。

一流企業になればなるほど難しくなり、障がい者枠とは真逆になります。

3.治療と仕事の両立は不可能

体調がよく障がいが安定しているときであれば何も問題ではないでしょう。

しかし、仕事量が増え残業が増えて体調を崩しても、周りの気遣いはないと思っていいです。

誰もが、自分の仕事でいっぱいいっぱいです。

そうなると、定期通院にも行けなくなり体調を崩すことになりかねません。

障がい者手帳なしで働くということは、治療と仕事の両立がとても難しいということです。

4.評価に配慮はない

障がい者枠と健常者枠の評価自体に差はありません。
どちらも、働き方と仕事内容によってアセスメントを行います、

もし、少しでも障がい者なんだから、その点も考慮して欲しいと思うのであれば、障がい者手帳を利用した就職をする方がいいです。

それでなければ、評価は一般枠の評価基準です。
厳しい評価ですが、結果は残せます。

障がい者手帳のエピソード

私が、今まで受けた無料相談の一部とアンケートの抜粋からです。

本人から了承を得て、実名と企業名を伏せてあります。

手帳ありのエピソード

良かったエピソード

-ケース1-

東京都:総合商社(26歳・女性)

私は、3年の就活中に手帳ありかなしかで悩み、結局障がい者の働き方の内容を聞き、途中から変更しました。

最初は、本当に悩みました。
希望は総合職でしたが、一般事務職での応募になるからです。

でも、結果経過観察の必要な私には、この働き方があっていたようです。

定期通院が、無理なくできているおかけで入社後一度も体調を崩したことはありません。

-ケース2-

横浜市:サービス(29歳・男性)

僕は、入社時は一般採用でした。2年後に、メンタルから体調を崩し休職をしました。

復帰する際に、障がい者手帳を取得していたので人事と上司に相談をして障がい者手帳を利用して勤務することを決めました。

決め手は、残業や仕事量への配慮です。オーバーワークが原因で、僕は休職しました。

今後も、同じことを繰り返すのが怖くて決めました。復帰後は、オーバーワークもなく管理された中で仕事が出来ているので、体調も良く健康管理が出来ています。

悪かったエピソード

-ケース3-

東京都:メーカー(28歳・男性)

学生の頃の事故が原因で障がい者になりました。

そのまま就活になったのですが、その時点で障がいがあるので障がい者として働くことを決め、そのまま入社しました。

就活は、確かに大変だった思いはありません。
直ぐに、内定をもらいました。

でも、実際に就職してがっかりしました。
あまりに、一般の働き方との差が大きいからです。

働き方も、責任も全く違います。
結局、合わなくて転職をしました。

手帳が有り、配慮のある環境が必要な人もいると思うので、すべての人が当てはまりませんが、就職は良く考えて働き方を決めるほうがいいです。

-ケース4-

東京都:金融系(25歳・女性)

前職でメンタル面で障がいが出て、休職後転職をしました。

転職する条件は、定期通院が可能なことでしたので、障がい者手帳を利用して転職をしました。

確かに配慮はあり通院は出来ていますが、忙しくても抜けるために同僚からはあまりよく思われていません。

働き甲斐も無いとは言いませんが、転職前の仕事より内容が明らかに簡単になっています。

手帳なしのエピソード

良かったエピソード

-ケース5-

大阪市:メーカー(31歳・男性)手帳を利用して就職をするか、しないかとても悩みました。

廻りの人からは、手帳が有ると障がいへの配慮はあるけど、やりがいのある仕事はできないと聞いていたからです。

自分の障がいについて主治医とも相談して、働き方は後でも変えることが出来ると言う家族のからのアドバイスもあり、思い切ってやってみたい事をやることにしました。

結果は、仕事が面白く順調です。

そのおかげか解りませんが、体調も良く定期通院も回数が減りました。

僕の場合ですが、手帳を利用しないでやりたい事に挑戦してみて良かったです。

-ケース6-

埼玉県:ソフトウェア・通信(29歳・女性)

私は、以前は事務アシスタントとして手帳を利用した就職をしていました。
配慮もあり、働きやすい環境でした。ですが、昇進も無ければ当然ですが給料のUPもありません。

そこで、体力と健康面でもう少し負担がかかっても仕事は続けられる自信もあったので、思い切って手帳を利用しない一般枠で転職をしました。

しかし、前職まで手帳を利用した働き方だったので転職は思ったように進ままず、時間がかかりました。

でも、転職はできました。あのまま挑戦しないで前職で止まっていたら、今はありませんでした。

障がいの程度にもよると思いますし、治療の経過にもよりますが、もし一般枠で仕事をしたいと思う気持ちがあれば、挑戦してみるべきだと思います。

働き方は、後でも変えることが出来ます。

悪かったエピソード

-ケース7-

千葉県:小売り(33歳・女性)

私は、就職するとき手帳を提示するか悩んだのですが、もしバレたら採用されないのではないかと思い、隠して就職をしました。

当然ですが、入社した会社も一緒に仕事をする人たちも何も知りません。

月一度の通院は、有休を利用するつもりでしたが、入社したてでは利用できません。
当時の私は無知で何も知らなかったのです。

結局欠勤という形で、毎月休むことになり、入社したてで休む奴という扱いになり、段々働きにくくなっていきました。

最終的に、6カ月直前で退職をしました。

こんなことなら、最初から手帳を出して説明をして働けばよかったと思っています。

-ケース8-

東京都:小売り(27歳・女性)

私には、メンタル面の障がいがあり日常生活を送るのが難しく、前職では出社するのも出来なかった為、退職をしました。

その時は、「今度、就職をするときは手帳を利用して合理的配慮があるところで仕事をしよう」と決めていました。

主治医からの、OKも出て仕事を始めることにしたのですが、いざとなると障がい者として働くことに抵抗があり、結局また手帳を提示しないで働き始めました。

結果、また3カ月目くらいで障がいが悪化してきて、また退職になりました。

今更ですが、無理しないで自分に合わせた働き方が一番良いということに気が付きました。

Q&A

障がい者手帳と就職について当メディアに来る質問で多いものをピックアップしました。

障がい者の手帳は就職に有利ですか?
就職という点だけで見ると判断はつきかねますが、障がい者が働きやすい環境に就職するという意味では有利です。
手帳があれば、必ず合理的配慮のある環境で仕事が出来ますか?
障がい者差別解消法や改正障がい者雇用促進法を順守した企業であれば可能です。
順守しない企業がありますか?
企業と職種によって出来る限界があるので、どの企業も同じ配慮が可能とは限りません。
障がい者として手帳ありとなしでは就職はどちらが有利ですか?

どちらとも言えません。
仕事への取り組み方によります。

障がいへの配慮を重視するのなら手帳が有るほうが有利です。
仕事でやりがいを感じ、キャリアを伸ばすのであれば手帳なしで一般枠のほうがいいでしょう。

途中で、手帳を利用した働き方に変えることはできますか?

手帳なしから有りの働き方には、転職しなくても同じ企業で変更は可能でしょう。
でも、働き方が変わると契約内容や給料は変わってきます。

逆の、手帳ありからなしに変更は、まず難しいです。
特に、契約社員の場合は難しいです。

企業には、ヘッドカウントという社員を管理する制度があり、コスト上数が決まっています。その数に余裕があれば可能性はありますが、中途採用の枠がいっぱいの場合は不可能です。

なので手帳ありからなしの選択をする場合は、転職をしたほうが早いです。

まとめ

障がい者手帳を利用した就職が有利か解説してきましたが如何でしたでしょうか。

ここでまとめます。

障がい者手帳を利用した就職が有利な場合
障がいの治療と仕事を両立させる働き方に向いています。

ただし、給料面では期待できません。
また、キャリアやスキルを活かすことも期待はできません。


障がい者手帳を利用しない就職が有利な場合
希望する職種にチャレンジが自由にできます。
給与もキャリアやスキルに合わせて上がるでしょう。

ただし、毎日が競争で失敗は禁物です。
成果を出し続ける必要があります。

体もメンタル面も過酷なことは予想できます。


結論としては、障がい者手帳があると就職が有利と言う訳ではなく、あなたの希望する働き方によって変わります。

どちらが、あなたの働き方に向いているかは、よく考えて進めてください。

  • 手帳を利用して合理的配慮がある障がい者としての就職
  • 手帳を利用しないで、一般枠への就職

と、ここまでは2016年ごろまでの働き方です。

2016年4月の障がい者差別解消法の施行からは、障がいへの合理的配慮のある中でキャリアやスキルを活かせ、やりがいがあり給料も働き方に合わせた金額の仕事が増えつつあり、現在の選択肢は3つになりました。

  • 手帳を利用して合理的配慮がある障がい者としての就職
  • 手帳を利用しないで、一般枠への就職
  • 合理的配慮があり、スキルやキャリアを活かしやりがいのある給料の良い就職

どの働き方も、あなた次第です。

良く考えて就職をしましょう。

KumagaiKumagai
就職・転職アドバイザー

就職や転職の条件はひとり一人違うので、誰もが同じ探し方にはなりません。
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